『フォーブス』誌で「世界で最も広い人脈の持ち主」と評される著者が、その人脈術を紹介。すぐに使えるテクニックが満載の1冊。


■損得を考えないこと
ビジネスであれ何の世界であれ、成功するには人に対抗するのではなく、人と協力することが大切である。世の中には、どんなデータ表を使っても説明できない不変の事実が一つある。それは、ビジネスは人間的な営みであり、それを動かし、判断を下すのは人だということだ。

人脈づくりは何よりも大切なビジネススキル・生活スキルである。なぜなら、つまるところ人間は、自分が知っている相手、自分が好きな相手と仕事をするからである。出世できるかどうかも、同じ原理によって決まる。

人と人とのつながりは、絶えず与えたり与えられたり、助けたり助けられたりする事によって成立する。誰かを誰かに紹介し、自分が持つ時間と知識を分け与え、それを他人と共有する事によって、全体のパイが大きくなっていく。

人脈を広げるにはまず、損得を計算するのをやめなければならない。ネットワークを築くには、互いに熱意を持つ人間同士を引き合わせなければならない。あなたがたくさんの人を助ければ、それだけあなたを助けてくれる人も増え、他人を助けるにしても大勢の人に手を貸してもらえる。インターネットと同じ原理で、人脈もアクセスする人や利用する人が増えるほど価値が高まっていく。

■三輪車の教訓
父は家族のためなら恥をかくことを厭わなかった。ある時、通りすがりの家の前に壊れた三輪車が捨ててあるのを見つけた。父は車をとめてその三輪車を拾い、家のドアをノックした。「お宅のごみ置き場にこの三輪車が捨ててあったんですが、頂いても構わないですか？直して息子に使わせたいのですが」

相手の見知らぬ女性も、こんな壊れた三輪車が誰かの役に立つなんてと喜んでくれた。さらに女性は「よろしければ自転車もありますよ。捨てるには惜しくてとってあったんです」と自転車もくれた。こうして父は、勇気を出してものを尋ねるのは一つの才能であり、時には相手への親切にさえつながる事を教えてくれた。父は「最悪ノーと言われるだけではないか」と教えてくれた。

信頼できる人間関係の輪を広げていくには、絶えず人前に出て新たな出会いを求めなければならない。知らない相手に電話したり初対面の人に自己紹介したりするたび、拒絶されたらどうしようと不安になる。そんな時は、三輪車の事を思い出してとにかく前に進むのだ。意識せずとも自然に人脈づくりができるという人など世の中にはほとんどいない。

著者 タール ラズ

『フォーチュン・スモール・ビジネス』の編集者、ビジネスジャーナリスト。 『インク・マガジン』『GQ』『サンフランシスコ・クロニクル』などに記事を執筆。

フェラッジ・グリーンライト CEO デロイト・コンサルティング、スターウッド・ホテル&リゾートなどのCMO(最高営業責任者)を歴任した後、ヤヤ・メディアCEO(最高経営責任者)を経て、人材育成・コンサルティングを手がけるフェラッジ・グリーンライトを創設、CEOを務める。 『ウォール・ストリートジャーナル』『ハーバード・ビジネス・レビュー』『GQ』などの新聞・雑誌に寄稿多数。