ホームレスに仕事を与え、自立を支援する雑誌『ビッグイシュー』。どのように起業して、これまでどのように活動してきたのかを代表が語っています。社会起業の立ち上げ方の参考となる1冊。
■ビッグイシュー
有限会社ビッグイシュー日本は2003年に設立され、ホームレス状態の人に雑誌『ビッグイシュー日本版』の販売の仕事を独占的に提供している。創刊から2013年3月末までに、累計571万冊の雑誌を売り、販売者に8億2千万円の収入を提供する事ができた。販売者となった人は延べ1427人、現役販売者132人、新しい仕事を見つけて就職した人は162人になる。
なぜ、ビッグイシューだったのか? この問いには答えが2つある。
①ホームレス問題が社会問題として一番難しそうな問題に思えたこと
②この問題に解決の方策があるのかどうかを探りたいと思ったこと
「ホームレス問題」についてはほとんど素人だった。そして、出合ったのが英国のビッグイシューだった。とにかく素晴らしいと思ったのは、その日の内にホームレスの人に仕事を提供できるという、敷居の低いシステムだった。同時に「ホームレス問題の当事者であるホームレス自身がその問題解決の担い手になる」という「セルフヘルプ」の仕組みを持っている事に共鳴した。
■社会起業をするには何から始めればいいのか
もし、実際に社会問題の解決のために「活動したい」「起業したい」と決意したとする。その時、「会いたい」と思う人に会いに行って、直接、教えを乞い、とことん意見を聞かせてもらうことで「これで動いてみよう!」と心から思える情報が得られる。
自分の中から出てきたアイデアを相手に真剣に問う事が大事であり、それが事業の原動力になっていく。具体的なノウハウやハウツーを聞く事以上に、疑問をぶつけて交わした会話が事業を進めていく際の指針や拠りどころになる。
もう1つ大切なのは、その問題が起こっている現場に行って、当事者などに会い、現場の状況を理解すること。困っている人、問題解決を手伝っている人に会って話を聞き、手に入れた資料に目を通し、自分の頭で考える事だ。
次に大切なのは「何をするか?」である。「そのビジネスを必要とする人」に直接聞きに行く。誰にどう聞けばいいのかわからない時には、一番近いと思われる社会的な活動に参加してみるといい。そこには多くの問題や課題、難題がゴロゴロしている。現場はヒント、アイデアの宝庫である。
起業家に向いている人とは、一言で言うと「アホな人」である。「アホ」とは、何かをやる際に打算や計算では動いておらず、それを超えている人の事だ。
著者 佐野 章二
1941年生まれ。有限会社ビッグイシュー日本 代表・CEO 大学卒業後、映像制作会社、大学の学生部勤務、都市計画プランナーの仕事を経て独立し、地域調査計画研究所を設立。 その後、 NPO法の制定に関する基礎調査をはじめ、各地でのNPO支援センターの立ち上げを応援。2000年代からは、ビジネスによる社会問題の解決を提案。 2001年 NPO「シチズンワークス」を設立し、『ビッグイシュー日本版』発行のアイデアが生まれる。 2003年有限会社ビッグイシュー日本を設立、共同代表に就任。同年ホームレスの仕事をつくり、自立を応援する雑誌『ビッグイシュー日本版』を大阪で創刊。東京でも発売以降、順次販売エリアは全国に広がっている。2007年にはビッグイシュー基金設立、理事長就任。2012年に同基金が、国税庁から認定NPO法人に認定される。
帯 棋士 羽生 善治 |
エコノミスト 2013年 9/17号 [雑誌] 同志社大学大学院教授 浜 矩子 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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第1章 「誰かが困っている問題」を仕事で解決する方法 | p.9 | 17分 | |
第2章 普通の人にこそ、社会的企業は起こせる | p.39 | 17分 | |
第3章 思い立ったら、すぐに組織はつくれる | p.69 | 16分 | |
第4章 笑うマネジメント | p.97 | 20分 | |
第5章 問題を解決するには、仕組みづくりから | p.133 | 20分 | |
エピローグ 1人ひとりに「出番」と「居場所」のある社会をつくる | p.169 | 8分 |
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