『俺のイタリアン』『俺のフレンチ』など、新しいビジネスモデルで繁盛点を作り上げた坂本孝氏について分析した本。どのようにして、『俺のイタリアン』が生み出されたのか紹介されています。
■『俺のイタリアン』のビジネスモデル
『俺のシリーズ』は前代未聞のビジネスである。「高級料理」「低価格」の両方を同時に成り遂げた店は他に存在しない。『俺のシリーズ』の「ビジネスモデル」は3つの組み合わせで可能となった。
①高級な食材に金を惜しまないこと(高い顧客満足)
②ミシュランの星クラスの一流シェフを集めること(参入障壁)
③立ち飲みにして高い顧客回転数を保つ(スペース有効活用による経費率低下)
『俺のシリーズ』のビジネスモデルは、高級食材をふんだんに使い、敢えてコストを高くした分を、お客さんの回転率を高めて補う事である。飲食業界の経営指南書には、普通「食材費の売上に占める原価率は30%以内に抑えるべし」と書かれている。ところが『俺のシリーズ』の原価率は概ね60%であり、場合によっては100%を超えるメニューもある。
『俺のイタリアン』は、「高級料理」「低価格」という同時に実現するはずがないものが両立している。立ち飲みの時間制で、スペースあたりの顧客回転数を高くして、高い食材費をカバーしている。
『俺のシリーズ』は、一号店の開店から2年半で、銀座、新橋を中心に合計21店舗(2014年3月現在)に達している。売上は30億円前後に達し、これから外食業界にビッグビジネスになる事は確実である。
『俺のシリーズ』を立ち上げた社長の坂本孝は古本販売チェーン『ブックオフ』の創業者でもある。この互いに共通点がほとんどないビジネスを異なる時期にゼロから立ち上げた。これは希有な才能である。起業家が新規ビジネスを始める時、自社の「コアビジネス」から離れない事が鉄則だからである。
起業家である坂本は、新しい事業を開始する時に物事の「本質を発見する」を駆使している。そして、部下や取引先など社内外の「人を動かす哲学」を持っている事である。
著者 尾崎 弘之
1960年生まれ。東京工科大学 教授 野村證券、モルガン・スタンレー証券バイス・プレジデント、ゴールドマン・サックス投信執行役員を歴任後、ベンチャー業界に転進。 ソフトバンク・インベストメント株式会社バイオ事業準備室長、バイオビジョン・キャピタル株式会社常務取締役、ディナベック株式会社取締役CFOを経て、現職。
帯 京セラ名誉会長 稲盛 和夫 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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はじめに | p.3 | 9分 | |
第1部 『ブックオフ』を『俺のイタリアン』につなげたイノベーション | p.25 | 53分 | |
第2部 「異能の起業家」坂本孝の魅力 | p.111 | 45分 | |
おわりに | p.183 | 1分 |
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