クリエイティブにまつわる迷信
創造性とは、神の恵みや祝福というより、適切なエコシステムを設計し、そこに適切な訓練を受けた幅広い視野を持つ人々を集める事で得られる結果である。適切な条件さえ揃えば、誰でも優れたアイデアを生み出せる。
ほとんどの組織は競争で優位に立つためにイノベーションを必要としているが、その出発点は創造性だ。イノベーションを起こすためにも、私達は創造性がどこからやってくるのか、より深く理解しておかなければならない。そのためには、創造性に関する迷信を書き直す必要がある。
①「ひらめいた」の迷信
天才的ひらめきは、創造的プロセスの一部に過ぎない。ひらめきの瞬間は「準備」「培養」「ひらめき」「評価」「精錬」の5つの段階からなる共通の創造的プロセスを踏む。イノベーションを起こすには、このプロセスのどの段階も欠かせない。準備を行わなければ、考える材料を十分に集められないし、培養期間をおかなければ、うまくいかない方法に固執し、必要なひらめきを得る事はできない。ひらめきを得た後でさえ、それを実現するにはアイデアを評価し、精錬する必要がある。
②「生れつきクリエイター」の迷信
遺伝学が発展した現在でも、創造力は遺伝子に組み込まれていると思われがちであるため、クリエイティブでないと見なされる人々の創造的な潜在能力を過小評価してしまっている。研究では、創造力は特定の性格特性に限定されるものではなく、遺伝情報に左右されるものでもない。
③「オリジナリティ」の迷信
画期的なアイデアはアイデアの積み重ねで発展する。新しいものが作られる時、普通は多くの人々が関わっている。別々に取り組んでいながら、同じ発見に辿り着く事もしばしばだ。発明家やマーケティング専門家、芸術家はすべて既存のアイデアという原材料を使って新しい作品を生み出している。「オリジナル」なクリエイターの強みは、様々な情報源からのアイデアにアクセスできる事である。
④「エキスパート」の迷信
あるレベルに達すると専門知識が創造力の妨げになり、クリエイティブな成果が減少する事がわかっている。専門知識が増えるにつれて、創造性が低下する事がある。経験を積む事で良いアイデアを見極められるようになるかもしれないが、そもそも選択肢となるアイデア創出率が減り、質と生産性が低下する。また深い知識がかえって新しいアイデアを生む妨げになり、奇抜なアイデアを見逃してしまう。
⑤「制約」の迷信
クリエイティブな仕事には、いくばくかの制約が欠かせない。何らかの制約が生じると、制約が枠組みとなり、その枠組みを通して問題を理解し、真に画期的な解決策を考え出せるようになる。