「話す」ことより「問いかける」ことこそが、コミュニケーションをする上で大切である。どのようにすれば、良好な人間関係を構築できるかについて論じられている一冊です。
■謙虚に問いかける
話す事より問いかけること。これは人付き合いにおいて最も根本的なものであり、それはいかなる場面においても当てはまる。相手に何を聞くか、いつその質問を持ち出すか、問いかける時にどういう態度で臨むべきか。これらはすべて、人と付き合い、コミュニケーションを深め、物事をうまく進める上で鍵となる要素である。
人と人が関係を築くプロセスは入り組んでいる。会話の中でつい失言してしまう事もあるし、後になって「ああ言えば良かった」と思う事が出てきたりする。いずれも、自分の言い分を伝える事と相手の話を聞く事のバランスを取る中で混乱し、つい自分の話を優先してしまう事によって起こる。大抵の場合、自分では思い当たらなかった事を相手から教えてもらえるような質問をするという心がけや好奇心といったものが、会話の中で忘れられているのだ。
良好なコミュニケーションには信頼関係の構築が不可欠で、信頼関係の構築には「謙虚に問いかける」事が求められる。
世界は今、目に見えて複雑になり、文化の多様性が増し、人々が互いに依存し合う事によって成り立っている。だからこそ、良好な人間関係を育む適切な質問をする事は、極めて重要である。相手の考えを聞く、その人と互いに尊重し合う気持ちを大切にする、相手は自分が必要とする知識を持っているであろう事に気づく。こうした心がけがなければ、国籍も職業も経歴も異なる相手を理解する事はできないし、一緒に仕事をしていく事などかなわない。
だからといって、どんな質問でも良いという訳ではない。ある一定の流儀を心得るべきで、これを「謙虚に問いかける」と名付けた。
「謙虚に問いかける」は、相手の警戒心を解く事ができる手法であり、自分では答えが見出せない事について質問する技術であり、その人の事を理解したいという純粋な気持ちをもって関係を築いていくための流儀である。
著者 エドガー・H・シャイン
1928年生まれ。マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営大学院名誉教授 1956年よりMIT スローン経営大学院で教鞭をとり1964年に組織心理学の教授に就任。1972年から1982年まで組織研究グループの学科長を務めた。2006年に退官し名誉教授となる。XY理論で有名なダグラス・マグレガーと一緒に研究活動を行ない、全米教育訓練研究所で長年働いた。 組織文化、組織開発、プロセス・コンサルテーション、キャリア・ダイナミクスに関するコンサルティングを行い、アップル、P&G、ヒューレット・パッカード、シンガポール経済開発庁など多数の企業・公的機関をクライアントとしてきた。
TOPPOINT |
ダイヤモンドハーバードビジネスレビュー 2016年 01 月号 [雑誌] (意思決定の罠) |
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
PRESIDENT(プレジデント)2019年10/4号(「人間の器」を広げる1冊) チームボックス代表取締役 中竹 竜二 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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はじめに 良好な人間関係と強い組織を築くために | p.15 | 5分 | |
第1章 謙虚に問いかける | p.27 | 16分 | |
第2章 実例に学ぶ「謙虚に問いかける」の実践 | p.53 | 18分 | |
第3章 ほかの問いかけと「謙虚に問いかける」はどう違うのか | p.83 | 15分 | |
第4章 自分が動き、自分が話す文化 | p.107 | 17分 | |
第5章 地位、肩書、役割 人々に行動をためらわせる「境界」の存在 | p.135 | 15分 | |
第6章 「謙虚に問いかける」を邪魔する力 | p.159 | 16分 | |
第7章 謙虚に問いかける態度を育てる | p.185 | 13分 |