第六感を過信しない
第六感にまつわる一番の問題は、相手の内なる考えが、表情やしぐさや話し方によってのみ表れる点である。人間は、相手の態度から本心を読み取る能力を磨いて読心術者となったが、同時に、表に出る態度を利用して、相手をわざと誤解させたり、嘘つきやペテン師になる技術を身につけたりもしてきた。ある研究グループが、本心と嘘を見分ける能力に関する様々な調査を、何十年分も遡って精査した結果、真実と嘘を見分ける能力の正答率は54%だった。
第六感の問題は、その能力に著しい欠陥がある事ではない。相手の心を読む能力を、実際よりもはるかに過信している点であり、自分の判断に自身を持ち過ぎているがゆえに、実際の自分の能力を冷静に把握できなくなる事だ。
相手の心を推測する時に犯すミス
私達が、相手の心を推測する時に犯すミスは、すべて同じ結果をもたらす。それは、相手の心の複雑さや深さ、細やかさ豊かさを過小評価する事だ。また、相手に無関心だと、相手の心を簡単に見過ごしてしまい、相手を一人の人間ではなく、心を持たない動物やモノのように考えてしまう。あるいは、相手を理解しようとしはじめると、持って生まれた能力で相手をいくらか理解できる一方、その過程で相手を単純化しすぎてしまう危険もある。相手も自分と同じように感じたり考えたりすると思うようになり、相手を詳しく知ろうとしてステレオタイプに頼ってしまう、さらには、目に見える相手の行動から相手の心を推測しようとする。これらの方法によって、ある程度は相手を理解できるが、同時に、相手の心が当然持つはずの複雑さが失われてしまう。相手を、ありのままに細かく見るのではなく、自分と同一視したり、相手が属する集団の他のメンバーと同一視したり、相手の行動だけを見て判断したりしてしまうのだ。
正直に話せる環境を作れ
相手の心を確実に読める方法など存在しない。お互いを理解する秘訣は、ボディランゲージを読み取る力を磨いたり、視点取得に熟達する事ではなく、理性をめいいっぱい働かせて、相手が自分の心を包み隠さず正直に話せる環境作りをする事だ。
管理職なら、部下に対してただ想像力を働かせるのではなく、部下の話をしっかり受け止め、部下が上司から罰を受けないという安心感を持てて、初めて部下の心を理解できる。夫婦なら、相手を完璧にわかっていると思ってお互いに黙っているのではなく、自分の考えを包み隠さず話し、相手の言い分を自分が正しくわかっているかどうかを確認できて、初めてお互いを理解できる。もし相手の心を理解したいなら、最も信用すべきは自分の洞察力ではなく、自分の耳なのかもしれない。