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2011/12/19更新

民法改正: 契約のルールが百年ぶりに変わる (ちくま新書)

  • 内田 貴
  • 発刊:2011年10月
  • 総ページ数:237P

178分

8P

  • 古典的
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日本民法の生い立ち

明治政府にとって、最大の外交案件は、西洋列強に治外法権などを認めた不平等条約の改正であった。日本が西洋列強と対等な条約を結ぶには、近代的な法典や司法制度を早期に確立する必要があった。

当時の日本には、大急ぎで法典を作る必要があったことに加えて、民法の規範にできるような社会的慣習を抽出することに無理があった。ヨーロッパの細かな条文を持ってきても、日本の社会にうまく合わなくても困る。そこで、細かな条文を全部落として、原則だけ、非常にシンプルに書くという方針が採用された。
結果、日本の民法は解釈なしには適用できないほどシンプルになり、民法典の外に多くの解釈論が存在することになった。これは透明性の観点からは望ましくないものである。

改正の対象

①消滅時効
民法は「債権は十年間行使しない時は、消滅する」と定めている。一方例外として、旅館の宿泊料、飲食料、診療債権など、職業や債権ごとに事細かな時効期間が定められている。また、商法には「商行為」の債権の時効は5年という定めがある。
これらを種別ごとの時効期間は必要か?
単純化すれば、債権管理の効率化を図ることができる。

②法定利率
民法では遅延損害金に対する法定利率を年5%、商事債権については商法で年6%と定めている。経済の低成長期に入ってからは、市場金利は法定利率よりはるかに低い状態が続いている。現実的に運用可能性のない高い利率を支払わせるのは不合理である。

③約款
約款とは保険や電気・ガスのように一対多数との契約を目的としたものである。多くの顧客と契約を結ぶために画一的な条件で締結する必要な取引は、特にネット取引において発展著しい。
約款は、交渉もせず、読んでもいない契約条件が、どうして契約の内容になって拘束するのかという問題がある。しかし、約款を契約として認めないのは、現実的でない。そこで一定の法的コントロールなどが検討される。

④サービス契約
民法典が典型的な契約として想定しているのは不動産売買である。しかし、現代の代表的な取引は、サービスの方に重点が移ってきている。サービス契約を新たな類型に追加することが議論されている。

⑤自然災害と契約法
民法には、自然災害などの事変に対応できないものがある。

改正のメリット

①法務コストの削減
中小企業は、現状では基本的な民法のルールを知るためにも、お金を払って専門家に尋ねるなどしている。確立したルールが明文化されれば、法務コストの節約になる。

②日本民法の国際競争力の向上
今日の世界の契約法の水準を示すような公平な内容を持ち、英訳しても明晰さを失わない文章で書かれた民法を持つ事は、国際取引において、準拠法として使用する大きな動機を与える。