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2012/02/27更新

さよなら!僕らのソニー (文春新書)

219分

8P

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ソニー神話の崩壊

ソニーは、ウォークマン等の「夢のある商品」を市場に送り出し続けてきた。その間、世界的な映画会社と音楽会社の2社を買収し、コンテンツの事業分野にも参入している。その後も、ゲーム事業やネットワーク事業など異分野への進出は続き、ソニーは複雑で巨大な企業グループへと成長する。
創業時、わずか百万円ほどだった売上高は、いまや7兆円を超える。20名程度の従業員は世界で16万人を数えるほどにもなった。
その反面、ここ10年、ウォークマンのような市場を牽引する大ヒット商品を出していない。ときめきや驚きを感じるような「ソニーらしい」製品を作れなくなっている。

巨大企業に成長したソニーにおいて、エレクトロニクス部門は、たえず「売れる商品」を市場に送り出す必要があった。それにはマニア向けのハイエンドの製品開発よりもボリュームゾーンと呼ばれる、より幅広い一般消費者向けの製品開発に力を注がなければならなかった。

そこで「売れると分かっている商品」で二番手商法に傾斜する。しかし、付加価値の高い製品を開発・販売することで高い利益を確保してきたソニーには、松下電器のような強い営業力も大量生産する製造ラインもなかった。
目先の売上に固執したことがマイナス・スパイラルとなって、ソニーの強みだった商品開発力に影を落とし、強い製品を作り出せなくなってしまった。

ソニースピリットは、ソニーの「もの作り」の精神であって、メーカーとしてのDNAである。ところが、映画や音楽、金融を抱え込んだソニーは、そのスピリットを失いつつある。

ソニーの凋落

ソニーの経営は、出井伸之氏の社長就任によって大きな転換期を迎える。出井氏は、インターネットを含むネットワークに繋がることから始まるビジネスへの取り組みや、ハード(製品)単体での売り切りビジネスではなく、売った後も続くビジネスモデルの開発に挑戦する。しかし、結果として成功しなかった。

出井氏は、コアビジネスをエレクトロニクス事業、エンタテインメント事業、ファイナンス事業とした。従来、本業であるエレクトロニクス事業と他の事業は対等な関係に位置づけられた。

出井氏の跡を継いでCEOに就任したストリンガー氏は、エンタテインメント事業を事業の中心とし、エレクトロニクス製品は、あくまで道具として考えた。つまり、ストリンガー氏は「もの作り」そのものに関心がない。
技術や製品に価値を見出さない経営首脳や幹部のもとでは、優秀なエンジニアほど、モチベーションが下がる。社外に新しい活躍の場を求めてソニーを去った優秀な研究者やエンジニアは少なくない。

ストリンガー体制下のソニーに以前のような輝きを期待してはいけない。今のソニーは、私たちに「夢」を与えてくれた、ソニースピリットあふれるソニーではない。