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2012/05/13更新

安藤忠雄 仕事をつくる―私の履歴書

108分

3P

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独学で建築を学ぶ

中学校二年生の時、自宅の長屋を改造し、二階建てに増築した。若い大工が一心不乱に働く姿を見て、建築という仕事に興味を持った。しかし、家庭の経済的理由と学力の問題から大学進学を諦めざるを得なかった私は、独学で建築を学んだ。

大学の建築科に進んだ友人に頼み、教科書を買ってもらい、それをひたすら読んだ。彼らが4年間かけて学ぶ量を1年で読もうと、朝起きてから寝るまで、ひたすら本に向かった。
つらかったのは、ともに学び、意見を交わす友人がいなかったことである。自分がどこに立っているのか、正しい方向に進んでいるのかさえ分からない。不安や孤独と闘う日々が続いた。

そんな私が今日まで生きてこられたのは、学歴もなく社会的な実績もない若者に、ただ「人間として面白いから」という理由で仕事を任せてくれた古き良き「勇気ある大阪人」がいたからである。あの人たちのおかげで、私は仕事をしながら建築を学ぶことができた。

気力、集中力、目的意識が肝要

建築士は、建築を職業にする者にとって、必要不可欠な資格である。大学も専門学校も出ていない私は、この国家試験を受けるために、長い実務経験が必要であった。その時には絶対に一発で合格しようと覚悟を決めた。

昼間の仕事から帰ると体はくたくたである。勉強をしようとしても眠気に襲われる。そこで、昼飯の時間を節約することにし、パンをかじりながら建築の専門書を読んだ。おかげで試験には一発で合格した。

気力、集中力、目的意識。強い思いを持つことが、自らに課したハードルを越えさせる。

仕事をつくる

事務所を開いた1969年、所員は私と妻、スタッフ1人の計3人であった。梅田駅に近い茶屋町に十坪の部屋を借りて細々とスタートを切った。仕事があった訳ではない。ゼロからのスタート。当時の日本は元気だったから、楽観的な思いもあったが、当然、仕事はなく、冷房も暖房もない部屋で毎日、天井を見つめながら本を読んだり、「こんなものをつくりたい」と夢想する毎日だった。

空き地を見つけると、勝手に空想の建築をデザインした。所有者が分かれば、こういうものを建てないかと提案に行った。むろん「頼みもしないことを」と追い返される。
私は、当時から仕事は自分でつくらなければならないと考えていた。事務所に座っていても、仕事が向こうからやってくる訳ではない。実績のない私に、依頼者など来るはずもない。学歴も、社会的基盤もないとは、こういうことかと痛感させられた。

仕事は判断力と実行力が全てである。しかし、今の若者たちは、小さい頃から親に過保護に育てられてきたため、自分一人では何もできない。様々な芸術分野のことに自分から興味を持ち、積極的に学ぼうとする姿勢が肝心である。