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2012/09/12更新

「電池」で負ければ日本は終わる

  • 岸 宣仁
  • 発刊:2012年6月
  • 総ページ数:242P

208分

8P

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日本が勝つために必要なこと

リチウムイオン電池の2012年4〜6月期の出荷実績の世界シェアは次の通り。

日本(三洋、ソニー、パナソニック等):33.7%
韓国(サムスンSDI、LG化学):42.6%

2008年のシェアは日本50.1%、韓国21.2%であったにも関わらず、わずか3年余で逆転されてしまった。日本はDRAMメモリーに始まって、液晶パネル、携帯電話、太陽光発電など、初めこそ世界シェアの過半数を上回りながら、技術が成熟化してくるとシェアを急速に落とす負けパターンを繰り返してきた。

円高という為替問題や人件費を中心としたコストの問題もあるが、日本の巻き返し戦略には、以下の対応が必要である。

①技術流出の防止
韓国企業から日本の技術者の引き抜きが進んでいる。日本企業は、営業秘密として守るべき技術情報を、社内でどう管理するかが重大な経営課題になってきた。日本も性悪説に立って、アメリカが制定した「経済スパイ法」のような厳格な法律を導入すべき時期が来ている。

②新たな産業競争力の強化
リチウムイオン電池の発明者である吉野彰・旭化成フェローによれば、電池のシェアが落ちているのは、用途である携帯やパソコンなどのIT製品のシェアが落ち込んだ結果であるという。本体を作っているのが中国、韓国であるため、調達先が日本から移ってしまった。

しかし、電池の材料では、日本はまだ7割ぐらいのシェアを持っている。電池の原材料費は、製品の75%程度を占めており、実際は材料を缶詰にして売っているようなもの。だから、電池は手放しても、材料さえ握っていれば構わないという。

リチウムイオン電池の産業構造を、川上(部品・素材)、川中(組み立て)、川下(製品・サービス)に分類すると、単純組み立てに当る「川中」は早い段階で撤退の決断をするのが賢明である。そして「川上」と「川下」を一体化した戦略を描き、市場を創造していくしか日本に生き残る道はない。

③国際標準化戦略
日本は、匠の技への信奉が強く、標準化を軽視する傾向が強かった。しかし、WTOのTBT協定により、国際標準を獲得しなければ市場で勝負にすらならないという、戦いのルールが変わってしまったことを認識すべきである。

リチウムイオン電池の競争で、最も警戒すべきは中国だという声が根強くある。中国企業とのコスト競争は重い課題だが、それ以前に、中国は材料や安全性の分野で米国と組み、独自の標準を握ろうとしている。

三元系(コバルト、ニッケル、マンガン)を正極材の主流とする日本に対し、オリビン系(リン酸鉄)を採用する米中との対決の図式は、どちらが市場を制するかというゼロサムゲームの展開になるのが避けられない。