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2012/10/05更新

ヒーローを待っていても世界は変わらない

  • 湯浅 誠
  • 発刊:2012年8月
  • 総ページ数:190P

125分

5P

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水戸黄門型ヒーローという魔法のボタンはない

最近は、「私たちは言いたいことを言いたいように言わせてもらう。判断はあなたに任せます。私を裏切らないと信じてます」という「おまかせ民主主義」を考えたい人たちがいる。

水戸黄門的なヒーローさえいてくれれば、不可能なことも可能になるはずだという期待である。「水戸黄門」型民主主義がうまくいくには、条件がある。

①善悪がはっきりしていて、勧善懲悪が成り立つこと
②黄門様が常に正しい裁決を下されること
③関係者全員が、平伏してその裁決を受け容れること

しかし、これは現実世界では稀にしか起こらない。何が善で何が悪か、大方の合意がすっきり取れることなど、まずありえない。格差・貧困が広がる中で、生活と仕事に追われて余裕のない人が増えていき、不満が嵩じ、この不正義が蔓延する世界のどこかに黄門様がいるはずだ。そう考えた人たちが期待を寄せたのが、小泉改革であり、民主党の政権交代である。そして今、期待は大阪市長の橋下徹さんに集まっている。

ヒーローを待ち望む心理は、民主主義の空洞化、形骸化の結果である。「民主主義」と「面倒くさくて、うんざりして、その上疲れる」という、切っても切れない2つを切り離そうとした結果である。

ヒーローを待っていても、世界は変わらない

水戸黄門型ヒーローというものは、実際には不可能なものを探し求める「ないものねだり」である以上、必ず裏切られる。

民主主義の深まり具合は、時間と空間をそのためにどれぐらい確保できるか、ということに比例する。社会が抱える問題はそれぞれ複雑で、一つひとつきちんと考えようとすれば、ものすごく時間がかかる。

しかし、皆忙しいために関わっている暇がない。そのために問題にレッテルを貼り、簡単に判断する。本当の意味で民主主義を深め、自分達で意見調整し、合意形成し、自分達で「決める」ことを実践するには、時間と空間という2つの問題に向き合う必要がある。

問題に向き合うには、様々な立場の人たちと意見交換するための社会参加、政治参加が必要である。そのためには、参加のバリアを下げることが重要となる。これを「制度の問題だろ」「役所の問題だろ」とするのは、誰かにしわ寄せしたままの状態を放置することになるだけ。参加のハードルを下げることは、まだ声を上げられない人たちに出向いて行き、寄り添って解決策を探すことである。

参加感を持てないままに留め置かれている人たちのニーズに寄り添えば、ニーズは顕在化し、より多くの工夫と仕掛けが蓄積されていく。そこでは、「決められる」とか「決められない」ではなく、「自分達で決める」のが常識になる。

ヒーローを待っていても、世界は変わらない。誰かを悪者に仕立て上げるだけでは、世界はよくならない。