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2012/12/19更新

わかりあえないことから──コミュニケーション能力とは何か (講談社現代新書)

174分

6P

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コミュニケーション能力とは何なのか?

近頃の若者に「コミュニケーション能力がない」と言われるが、本当なのか?
そもそもコミュニケーション能力とは何かという本質を探る1冊。


■コミュニケーション能力とは何か
昨今は、どこに行ってもコミュニケーションの必要性が喧伝される。企業の人事担当者が新卒採用にあたって最も重視した能力について、日本経団連の調査では「コミュニケーション能力」が9年連続でトップとなっている。では、企業がこうも強く要求している「コミュニケーション能力」とは、いったい何か?

①異文化理解能力
異なる価値観を持った人に対しても、その文化的背景を理解し、説得し、妥協点を見出すことができること。

②日本社会における従来型のコミュニケーション能力
「上司の意図を察して機敏に行動する」「会議の空気を読んで反対意見を言わない」「輪を乱さない」など。

今、企業が求めるコミュニケーション能力は、このような明らかに矛盾した2つの能力を要求している。つまり、完全にダブルバインド(二重拘束)の状態にある。ダブルバインドとは、二つの矛盾したコマンドが強制されている状態を言う。さらに、何よりも始末に悪いのは、これを要求している側が、その矛盾に気が付いていない点である。

超短要約

今までは、少なくとも1980年代までは、遠くで、誰かが決めてくれた事に、何となく従っていれば、小さな不都合はあったとしても、大体、みんなが幸せになれる社会だった。しかし、今は自分たちで自分たちの地域のことについて判断し、責任を持たなければならない。

この1点が変わったために、日本人に要求されているコミュニケーション能力の質が、大きく変わりつつある。今までは、遠くで誰かが決めている事を何となく理解する能力、空気を読むといった能力が求められてきた。

しかし、もう日本人はバラバラである。どんな国家も、成長型の社会から成熟型の社会へと変容していく過程で、価値の多様化という局面を迎える。もう給与が上がらないと悟った時点で、人間は自分の固有の幸せを考え始める。価値観は多様化する。ライフスタイルは様々になる。

だから、この新しい時代には「バラバラな人間が、価値観はバラバラなままで、どうにかしてうまくやっていく能力」が求められている。これを「協調性から社交性へ」呼んできた。

しかし、この社交性という概念は、これまでの日本社会では「上辺だけの付き合い」「表面上の交際」といったマイナスのイメージがつきまとった。私たちは「心からわかりあう関係を作りなさい」と教え育てられてきた。

しかしもう日本人は心からわかりあえないのだ。心からわかりあえる前提とし、最終目標としてコミュニケーションというものを考えるのか、「いやいや人間同士はわかりあえない。でもわかりあえない人間同士が、どうにかして共有できる部分を見つけて、それを広げていくことならできるかもしれない」と考えるのか。

「心からわかりあえなければコミュニケーションではない」という言葉は、耳に心地よいけれど、そこには、心からわかりあう可能性のない人々をあらかじめ排除するシマ国、ムラ社会の論理が働いていないだろうか。

協調性がなくていいとは言わないが、日本の子供たちは世界標準から見れば、まだまだ集団性は強い方だ。ならばプラスαの能力として、これからは「社交性」を授けていかねばならない。

日本社会には、会社などの組織にも、教育システム全体にも、コミュニケーションのダブルバインドが広がっている。このダブルバインドをはっきり認識し、そこと向き合う事から始めるしかない。

わかりあう、察し合う古き良き日本社会が、中途半端に崩れていきつつある。私たち日本人も、国際化された社会の中で生きざるを得ない。しかし、言語やコミュニケーションの変化は、強い保守性を伴うから、一朝一夕に変わるものでもない。私たちは、この中途半端さ、ダブルバインドから来る「自分が自分でない感覚」と向き合わなければならない。

わかりあえないというところから歩き出そう。

著者 平田 オリザ

1962年生まれ。大阪大学コミュニケーションデザイン・センター教授 劇作家 国際基督教大学在学中に劇団「青年団」結成。戯曲と演出を担当。 桜美林大学文学部助教授、桜美林大学総合文化学群教授、東京大学教育学部講師、早稲田大学文学部講師などを歴任。2009年より内閣官房参与。 現在、大阪大学コミュニケーションデザイン・センター教授。2002年度から採用された、国語教科書に掲載されている平田のワークショップの方法論により、多くの子どもたちが、教室で演劇をつくるようになっている。 戯曲の代表作に『東京ノート』(岸田國士戯曲賞受賞)、『その河をこえて、五月』(朝日舞台芸術賞グランプリ)など。

この本を推薦しているメディア・人物

帯
作家 谷川 俊太郎
帯2 帯2
大谷大学教授 鷲田 清一
帯3 帯3
脳科学者 茂木 健一郎

章の構成 / 読書指針

章名 開始 目安 重要度
まえがき p.3 2分
第1章 コミュニケーション能力とは何か? p.11 18分
第2章 喋らないという表現 p.41 12分
第3章 ランダムをプログラミングする p.61 10分
第4章 冗長率を操作する p.77 22分
第5章 「対話」の言葉を作る p.113 11分
第6章 コンテクストの「ずれ」 p.131 20分
第7章 コミュニケーションデザインという視点 p.165 22分
第8章 協調性から社交性へ p.201 14分
あとがき p.224 4分

この本に影響を与えている書籍(参考文献、引用等から)

くりかえしの文法―日・英語比較対照 (日本語叢書) くりかえしの文法―日・英語比較対照 (日本語叢書)
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