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インドで多くの貧しい患者を救う奇跡の組織から学ぶ

インドのアラヴィンド眼科病院。この病院は、独自のシステムによって、多くの貧しい人々を救っている。ハーバード・ビジネススクールでは、アラヴィンドのケーススタディが20年近くにわたって学生たちの必読教材になっている。本書は、そのアラヴィンドの起業から現在に至るまでの物語である。


■アラヴィンド眼科病院
1976年、「ドクターV」の名前で世界的に知られるゴヴィンダッパ・ヴェンカタスワミー医師は、兄弟とその配偶者と共にインド南部にアラヴィンド眼科病院を開いた。ときに58歳。資金も事業計画も、失敗した際の安全策もなかった。あったのは11床のベッドと大きすぎる使命だけ。治せる失明を世の中からなくすという使命だ。

そのアラヴィンドは、いまや世界最大規模の数の手術をこなす。2010年には年間250万人以上の患者を診察し、30万件の手術を実施するまでに成長した。

イギリスの国民健康サービスが行う眼科手術は年間約50万件。アラヴィンドはその半分以上の量の眼科手術をこなしているだけでなく、イギリスがかけるコストの1%足らずで達成している。

11床のベッドから始めた病院は、1981年には600床になっていた。1985年に2つ目、1988年に3つ目の病院を開設。2010年の段階で総ベッド数は3200床を超えている。

超短要約

■やるべきことを、ただひたすらにやる
アラヴィンドのモデルに関する説明の大半は、物語の中盤から始まる。アラヴィンド眼科病院の設立を出発点とし、革新的ながら財政的に実現可能なアプローチで、次々に系列病院が誕生した過程を駆け足でなぞる。しかし実際は、ドクターVが村や州、さらには国家規模の取り組みで20年以上にわたり積み重ねてきた実績の上に、アラヴィンドは築かれた。執刀した手術は10万件以上。地域貢献モデルの先駆者として大きな成功を収め、インドの国民栄誉賞にあたるパドゥマシュリ賞を受賞していた。

ただし、ドクターVは隠居して満足するような男ではなかった。アラヴィンドを創立した当時は、眼科は医療の中で人気のない分野だった。ほとんど儲からず、白内障手術のニーズはかなり高いものの実際の需要は少なくて、専門性も発達していなかった。

そのような状況で、定年退職したドクターVは、資本もビジネスプランもなしに、治せる失明を根絶するという使命だけをもって、一族を巻き込んだ。

最初の病院を建設するために、ドクターVは自宅を抵当に入れ、弟妹は蓄えをはたき、1人500ルピー(現在貨幣価値で900円)ずつ出資した。それでも足りなくなると、代々受け継いできた宝石を質に入れ、支払いにあてた。

ドクターVと創立メンバーは夜明けから日が沈んだ後もずっと、朝5時から夜9時まで週7日間働いた。平日は病院で手術をし、週末はアイ・キャンプで手術をし、病院や待合室の清掃など必要な事はすべてやった。しばらくはそれぞれ政府や民間の病院でアルバイトをして、アラヴィンドの乏しい収入を補った。成功がもたらす便利さの多くを失い、質素な暮らしを送った。創立から最初の10年は財政的に逼迫しており、創立メンバーの給料はかなり安かった。

ドクターVはいつも、治療費を安く抑え、たくさんの患者を診る事で回転させるように言っていた。高尚なビジョンに奉仕するために私利私欲を捨てる日々を何ヶ月も重ねていく内に、少しずつ大きな力が引き出されていく。だからこそ、お金ではアラヴィンドの成功を説明できない。

「やるべき仕事をする。金はあとからついてくる」。この言葉をドクターVは何度となく繰り返すことになる。奉仕すればふさわしい見返りを受けるという原則は、アラヴィンドを嫌でも自立させ、前例のない新しいシステムを育てる事になった。

著者 スキトラ・シェノイ

バングラデシュ大学とロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで学位を取得したのち、デロイト研究所、コロンビア大学ビジネススクール、スタンフォード大学デザインスクール、NGOのバングラデシュ地方開発委員会、国際コンサルティング企業モニターグループなどで研究活動を行う。 現在は、貧困者も含むあらゆる所得層を対象とする包括的金融サービスの普及に取り組むほか、貧しい若者が有意義な職につく支援をするユース・フォー・ジョブズ財団の顧問も務める。

著者 パヴィスラ・K・メータ

ライター、映画監督 アラヴィンド一族。大おじであるドクターVの生涯と業績をたどったドキュメンタリー『Infinite Vision』が2004年のニューヨーク国際インディペンデント映画祭で最優秀国際ドキュメンタリー賞を受賞。視覚障害者に本を届ける世界最大のデジタル図書館などを運営するシリコンバレーの非営利団体ベネテックで、ボランティア活動の責任者も務めた。現在はアラヴィンド眼科財団の理事。

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章の構成 / 読書指針

章名 開始 目安 重要度
はじめに p.5 6分
第1章 ハンバーガーと失明 p.18 15分
第2章 無料でも十分でないというなら p.37 18分
第3章 不朽のケーススタディ p.59 11分
第4章 眼科医になったのは偶然だった p.74 10分
第5章 やるべきことを、ただひたすらに p.86 6分
第6章 制約があるからこそ p.93 19分
第7章 人材は見つけるのではなく育てる p.116 13分
第8章 彼らがここで働きつづける理由 p.132 11分
第9章 人類は進化の途上 p.146 7分
第10章 内なる声に耳を澄ませて p.155 11分
第11章 アラヴィンド、工場をつくる p.168 11分
第12章 利益ではなくサービスを最大化する p.181 7分
第13章 使命と葛藤 p.190 11分
第14章 アラヴィンドを世界に複製する p.204 13分
第15章 キリマンジャロのように p.220 9分
第16章 価値観を伝える p.231 16分
第17章 「黄金のアーチ」を生んだアメリカにアラヴィンドを p.251 6分
第18章 世代交代の苦しみ p.260 6分
第19章 想いは受け継がれる p.268 11分
第20章 新しい成長のモデルを求めて p.282 13分
第21章 真実を実践する場所 p.298 14分
エピローグ p.315 4分

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