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2013/05/06更新

経済大陸アフリカ (中公新書)

235分

8P

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危うい資源依存の経済成長

なぜ、資源価格がアフリカの経済規模を左右するのか。アフリカ、特にサブサハラ・アフリカは1960年代には農産品が総輸出の7割近くを占めていた。しかし現在ではその割合は1割ほどに過ぎず、かわって鉱物性燃料が総輸出の約7割を占める。アフリカ地域全体が産油国と同じような貿易構成になっている。原油だけでなく、鉱産物輸出も着実に増えている。停滞する製造業部門や農業部門と違ってアフリカにおける鉱業開発は急速に進んでいる。

サブサハラ・アフリカでは経済成長の多くを個人消費に依存している。生産投資は国外からの投資にまかされ、その結果増えていく所得の多くが消費に回っている。そのため、資源輸出が急速に増えながらも多様な財の輸入が同じように増え、結局収支はトントンになって、経済成長における外需の貢献を相殺している。この自立性に欠けた成長構図には危ういものがある。資源価格が下落すれば投資も減り、経済成長もとまる。

資源の罠

資源産業は多くの雇用を生まないので、経済成長の果実が社会に広く分配されない。経済成長と共に完全雇用が実現して成長果実が労働者に分配される製造業依存の東アジアとこの点が異なる。資源国の場合、経済成長するに従って所得格差が広がっていく。アフリカの経済成長は、貧困削減につながっていない。アフリカ人の6割を収容し貧困層の8割が滞留している農村に成長の恩恵が浸透していかないからである。

通常は経済成長に伴って都市人口が増え、都市の購買力が上がり、食料全般に対する支出が増えて農村部の所得になる。経済成長の成果は、都市と農村を循環して農村に分配される。しかし、アフリカではこの経路が閉ざされている。この原因は、アフリカ農業の低開発にある。アフリカ農業の土地生産性は世界平均の1/3以下。生産性を高めなければ所得上昇の見込みがたたない。結果として、生産性の停滞は穀物輸入の増大をもたらしている。

さらに農業の低開発は、アフリカの製造業にとって深刻な足かせになっている。低開発とは、高コストである事も意味する。脆弱な生産力しか持たない国では概して物価が高く、賃金水準を押し上げる。経済発展の水準が低いにもかかわらず賃金が高いと、当然ながら労働力をあてにした投資は入ってこないのだ。

アフリカが食糧を自給できていた1960年当時の人口は3億人、都市化率は15%以下だった。それが現在は10億人を超え、都市化率は40%。この人口を養うには食糧生産農業の近代化が必要である。そのための政策努力、開発援助こそ最大の課題としなければならない。食糧生産性の向上がなければ農村に所得がまわらず、工業化も起こらず、貧困削減は実現しない。