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イノベーションは必ずしも有効と言えない

問題の一端は、イノベーションの構造にある。例えば、液晶テレビは、偏光板、カラーフィルター、液晶配向膜、導光板、バックライトなどの部品からできている。そして、液晶テレビの性能を飛躍的に引き上げたのは、これら部品だった。

イノベーションの背後には汎用部材技術、または装置の進歩が控えている。だから、同業他社や新規参入者もイノベーションの源泉にアクセスできてしまう。そうなると、いくら発売当初に最高スペックを誇っていようと、競合他社がキャッチアップしてくるのは時間の問題で、横並びの同質競争に陥ってしまう。いくらイノベーションに成功したと言っても、その成果を独り占めにする訳にはいかないのだ。

メーカーは「いいものを作れば売れる」とイノベーションに突き進んできたが、その前提は正しいのか。技術者は「いいもの」をパラメーターに置き換えて数値競争を演じるが、本当に測りやすい数字を追いかける事が買い手のためになるのか。消費者は、あっという間に高性能に慣れたり、飽きてしまい、さらなる性能の向上には見向きもしなくなってしまう。

戦後から40年以上が経過すると、現存する製品カテゴリーのほとんどで普及率が8割を超え、購入経験を積んだ買換層が市場を構成するに至る。この層は、単純に性能向上や多機能化を謳っても、容易に飛びついてくれない。

リ・インベンション

成熟期に入った日本において、企業は新しい価値基準を打ち立てなくてはならない。具体的には、身の回りにある製品のコンセプトを見つめ直す。つまり「誰に、何を、どのように提供するものなのか」を改訂する。このうちのいずれかを大きく変えて、従来の製品を規定するパラメーターと訣別する事が「リ・インベンション」に他ならない。

リ・インベンションは「ある製品について、今となっては解消できるようになったにもかかわらず放置されている不合理や、かつては合理だったものの中に新たに芽生えた不合理を解消すべく、当該製品を特徴づけると長らく考えられてきた特性パラメーターを無視して、誰に、何を、どのように提供すべきものなのかにまで立ち返り、評価軸自体を作り替えること」と定義される。

リ・インベンションが泥沼の競争から抜け出す手段となりうるのは、消費者の共感を生むからである。その共感は「インテグリティ(全体として1つにまとまった状態)」から生まれる。インテグリティを実現する製品企画の要点は3つ。

①標的探索
成熟期や衰退期にある製品で、最新の技術を使う事で、ユーザビリティを劇的に引き上げる方法があるかを問う。

②創意工夫
従来はコアユーザーと目されていなかった層に焦点を当て、本質機能から遠く離れた副次機能を見つめてみる。

③十分条件
製品の隅から隅まで理想を貫く。