ビル・ゲイツやGoogleが出資するインターネット教育NPO「カーンアカデミー」の創業者がその原点や教育論を語る。「質の高い教育を、無料で、世界中のすべての人に提供する」というミッションを掲げ、世界から注目される教育とはどういったものか。
■一人の生徒から始まった
カーン・アカデミーという形をとる前の最初の頃、ナディアという従兄弟の生徒が1人だけいた。2004年当時はまじめな12歳の女の子で、生まれて初めて勉学上の挫折を味わったばかりだった。そこで、電話やネット経由で家庭教師をしてあげようと、よく考えもせずに提案した。当初は完全に1つの実験だった。教師のトレーニングを受けた訳でもなく、効果的な教授法に関するすごいアイデアを持っていた訳でもなかった。
まず、2人のために同じ安価なペンタブレットを用意し、それぞれのコンピュータ上で相手の書く内容が見られるようにした。電話で話しながら、彼女の学習のつまずきの原因を解明するスケジュールを立てた。
教室であれ電話の向こうであれ、教師の存在は生徒の思考停止をもたらす事がある。生徒の立場から言えば、問いが発せられると、即答が期待され、それがプレッシャーを生む。そして目の前の問題に集中できなくなる。
■教室はひとつ
現代人の大半は同じような年齢の子供たちがいる学校へ通い、初等教育から高等教育まで、この同年齢集団に属し続けてきた。同学年の生徒に期待される事は全く同じ。まるで横並びの金太郎飴だ。
子供たちを年齢で区分するのは決して自然な事ではない。未来の学校は垣根のない「ひとつの教室」を中心にすべきだ。一方的な講義や画一的なカリキュラムに支配される事がなければ、それができない理由はない。マイペース学習を基本モデルにすれば、年齢別に子供をくくる必要はないし、能力別にクラス分けする理由など全くない。
コンピュータによるマイペース学習は、全世界に公平な環境を整備するための、優れたきっかけになるはずだ。何千万という子供が全く教育を受ける事ができない、何千ものコミュニティで展開可能である。
著者 サルマン・カーン
1976年生まれ。カーンアカデミー創設者 インドとバングラデシュからの移民である両親のもと、ルイジアナ州メテリーに生まれる。クラス代表を務めたハーバード・ビジネススクールではMBAを取得したほか、マサチューセッツ工科大学(MIT)の学位を3つ取得。 オラクルをはじめとするシリコンバレーの新興企業数社、ヘッジファンドのアナリストを経て、NPOカーンアカデミーを創設。
帯 マイクロソフト共同創業者・会長 ビル・ゲイツ |
帯2 TEDキュレーター クリス・アンダーソン |
帯3 グーグル会長 エリック・シュミット |
帯4 映画製作者 ジョージ・ルーカス |
Chikirinの日記 ちきりん |
TOPPOINT |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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はじめに 質の高い教育を、無料で、世界中のすべての人に | p.9 | 10分 | |
第I部 「教える」ということ | p.23 | 32分 | |
第II部 壊れたモデル | p.67 | 44分 | |
第III部 現実の世界へ | p.127 | 38分 | |
第IV部 世界はひとつの教室 | p.179 | 44分 | |
むすび 創造のための時間をつくる | p.239 | 7分 |
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