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2013/10/27更新

ペンギンが空を飛んだ日―IC乗車券・Suicaが変えたライフスタイル (交通新聞社新書)

167分

2P

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Suicaが実用化されるまでの舞台裏

JR東日本のIC乗車券カード「Suica」のプロジェクトは、たった2名から始まった。Suicaの開発から実用化までの舞台裏が語られた1冊。


■ICカードの可能性
磁気式に比べはるかに記憶容量が大きいICカードは、セキュリティに関しても格段のメリットがある。Suicaの開発で焦点となったのは処理の速さである。JR東日本の自動改札は磁気カードの導入が先行したため、ICカードはどうしてもそれより速い処理が必須条件となった。いかに速く、いかに多くの人数を改札口で処理できるか。そこで浮上してきたのが非接触式のICカードである。お客様は定期券をパスケースに入れたままで自動改札機を素早く通過できるという画期的なサービスが可能となる。

自動改札機の取り替えサイクルは約10年。1990年に導入すれば2000年頃に老朽取り替えの時期が来る事はわかっていた。その取り替えには約330億円かかる。それには2〜3年前から準備をしなければならない。1994年2月に、非接触式ICカードによる定期券システムのモニター試験が行われた。しかし、結果は散々だった。ICカードと情報の交信をする読み取り機とのやり取りがうまくいかない。双方の通信が制限時間内に行われずに、改札機を通過できない割合を示す「通過阻害率」が、磁気式システムの20倍以上になってしまったのだ。

超短要約

■鉄道の枠を超えるために
当時、JR東日本はSuica以前に導入していた磁気式自動改札機の老朽化に伴う一斉更新の時期を迎えていた。磁気式改札機自体は、それ以前の駅員の手作業による改札業務を一気に自動化した画期的なものだったが、乗車券、定期券との物理的な接触部分が多く、機器のメンテナンスコストが莫大にかかっていた。

新たなICカードによる改札システムによって、駅の機器にかかる費用をどれだけ下げられるか。単に技術の先進性だけでなく、費用対効果でどれだけのメリットを会社にもたらす事ができるかが問われていた。

さらに鉄道以外にもビジネスチャンスを創るというテーマは、JR東日本にとってより切実な問題だった。まず鉄道輸送事業は、1990年代の前半からお客様の数が伸び悩むという深刻な現実があった。これには様々な要因がある。中距離・遠距離運輸で航空会社は航空運賃の引き下げなどによって、鉄道会社に挑戦状を叩き付け、お客様を奪われる結果となっていた。近距離輸送では、最も利用が多い通勤・通学に電車を使うお客様の数が頭打ちとなってきた。長期低落化傾向が続くお客様の減少をどう食い止めて、利益を上げていくかは鉄道会社の未来に関わる大問題だったのである。

JR東日本もこの問題に対し、直通運転の拡大や駅設備の充実をはじめ、キオスクの充実、「ルミネ」「アトレ」といった駅ビルなどの商業施設の展開、クレジットカードの展開など生活サービス企業としての側面を強く打ち出していった。鉄道以外のビジネスを育て、鉄道との相乗効果で新たな収益源を生み出そうという戦略である。そのためのツールがICカードであるSuicaだった。

著者 椎橋 章夫

1953年生まれ。JR東日本メカトロニクス 代表取締役社長 1976年、日本国有鉄道入社。1987年、民営・分割化により東日本旅客鉄道入社。本社設備部旅客設備課長、同鉄道事業本部Suicaシステム推進プロジェクト担当部長、同IT・Suica事業本部副本部長などを歴任、Suicaプロジェクトの指揮を執る。 2012年、JR東日本メカトロニクス入社。現在、同社代表取締役社長。

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章の構成 / 読書指針

章名 開始 目安 重要度
第1章 一枚のカードが変えた鉄道の世界 p.13 13分
第2章 技術開発の時代―ICカード黎明期の苦闘 p.35 15分
第3章 ビジネスモデル構築の時代―130億円を回収せよ! p.61 13分
第4章 Suica導入の時代 その1―混成部隊のチームワーク力が真価を発揮 p.83 14分
第5章 Suica導入の時代 その2―Suicaが鉄道の新しい扉を開けた日 p.107 10分
第6章 Suica育成の時代―Suica大ヒット。次の戦略が動き出す p.125 10分
第7章 拡大展開の時代―Suicaが変える駅ナカ・街ナカ p.143 12分
第8章 IC時代の陥穽と教訓 p.163 5分
第9章 世界最大のIC乗車券ネットワークが完成した! p.171 16分
第10章 Suicaという“ものづくり”への思い p.199 13分
あとがき p.222 2分

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