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マーケットを創造する

ウィンザーホテル洞爺は、1997年に再建に着手した当初から多くの困難にさらされてきたプロジェクトであった。

・最寄空港から2時間という立地状況
・客室数400室という、リゾートホテルとしては世界最大級の規模
・会員制ホテルとして建設された事によるアンバランスな施設
・極端な季節変動
・労働市場が存在しない(人材調達の困難)

さらに、日本には多くの富裕層は存在するが、海外のマーケットのようにリゾートに数週間滞在して、自分のスタイルで自在にホテルを使いこなしたりするマーケットは、ほとんど存在していない。日本には「旅館」という独特のリゾート文化がある。しかし、旅館の本質は、利用客が「一泊しかしない」事を前提に、接遇や料理などの各種サービスを一点集中する文化である。このような状況下、日本に高級リゾートホテルを、国際級のものとして定着させ、都心から遠く離れた場所に確立するのは難しかった。

マーケットが存在しないなら、創るしかない。まず着目したのは「食」である。世界的にみて,リゾートホテルの食のレベルは、決して高いものではない。洞爺のホテルプロジェクトでは、世界水準で見ても一流の「食文化」の提供を中核に据え、東京のグルメ文化人マーケットを主要ターゲットに設定した。この食通の人達に、長い移動時間を意識させず、リピーターとなり、顧客となってもらうには、東京のレベルを超えた食文化を提供する事が必須である。そこで、フランス料理のミシュラン三つ星レストラン「ミシェル・ブラス」と京都の摘み草料理「美山荘」であった。

重要なポイントは、単に「食」を提供するのではなく「食文化」を提供する選択をした事だ。一流の料理人には「哲学」があるもので、究極は、客はその知的付加価値に対価を支払うものであるからだ。単に美味しい料理は、それだけではオンリーワンにはなれない。

鍵は「ホスピタリティ」

かつて、例をみない程に多様化している消費者のニーズに確実に応え、ビジネスとして確実に成長するためには「ホスピタリティ」の真のコンセプトを理解する事が21世紀の観光事業の大命題である。

「ホスピタリティ」とは「相手の状況によって、応対を自由自在に変えること」である。一方、サービスとはその逆で「万人に均一な対応をすること」と定義される。現代のように複雑で多様化した顧客の満足度を向上させるためには、この「ホスピタリティ」的対応を徹底する事が不可欠である。

ホテルの社会的信頼感は、そのまま、顧客のアイデンティティと直結するため、顧客戦略上も重要である。顧客とホテル側の長期的信頼関係の維持と、対応の柔軟性の両立。これこそが「ホスピタリティ」の究極の目標である。