ジャック・ウェルチやジェフ・イメルトなど、名だたる経営者を生み出し、120年間も優れた業績を残しているGEの経営について書かれている本。日本GEの代表が、GEにはどのような仕組みがあるのかを紹介しています。


■GEで極めて印象的な4つのこと
①とにかく人材の育成にエネルギーを注いでいる
社員1人ひとりをしっかり成長させ、力をつけさせる。それが明確なリーダーの役割の1つになっている。成長のためには、積極的に新しいトライアルやチャレンジに取り組ませる。

②細かな縛りがない
インテグリティ（高い企業倫理）最重視の姿勢や社内の行動規範である「グロースバリュー」など大きな枠組みはあるが、仕事において何をやっていいか、何をやってはいけないか、といった事にあまり細かな縛りはない。

③変化が激しい
事業の入れ替えは珍しい事ではない。過去の経緯に関係なく、スケールの大きなM&Aで大胆に事業構造を変えていく。

④組織の階層が極めてシンプルでわかりやすい
世界に30万人の社員を擁しながら、組織は極めてシンプルである。全社のCEOのジェフ・イメルトは、自ら承認して選んだシニアマネジメントを650人擁し、人事権を持っている。この650人が、イメルトが何を考えているかを理解し、それを自分のビジネスに適用するために、チームをコミュニケートし、アクションを起こしていく。

■全員にリーダーシップを求める
GEの人材育成に対する意識は極めて高い。この背景にあるのが「リーダーシップ」へのこだわりである。まず、人材の育成にリーダー達がコミットしている。そして、求められるリーダーシップとは何か、それをどう育てるか、という事をしっかり定義している。

GEが目指すのは、社員1人ひとり、社員全員がリーダーシップを持って仕事をするという事である。組織のいろいろなレベルの人達が、自発的に問題解決ができるようにする。周りのいろんな人達と積極的にコミュニケーションを取り、周囲を巻き込んで進めていく。そういう事が、社内の至るところで起こってくるようにする事が大切である。

150ヵ国に進出しているGEでは、世界各地でいろいろなビジネスを展開しているが、そこで行われているほとんどの決断は、イメルト以外の人間によるものである。それが、GE全体の決断のレベルを決めている。リーダーシップが個々に発揮されている企業というのは、企業としての力が上がる。だから、GEはリーダーシップを全員に求めるのである。

■リーダーに必要なもの
リーダーシップを振るうリーダーに必要なものを、GEは4つ定義している。

①リーダーシップスキル
②ビジネス知識・能力
③専門知識・能力
④グロースバリュー（行動規範）

①〜③が優れていても、グロースバリューがなければ、リーダーにはなれない。

このバリューでは、まずは何を大事にすべきか、という価値観を社員に提示している。バリューは「外部志向」「明確でわかりやすい思考」「想像力と勇気」「包容力」「専門性」という5つの要素からなる。GEでは、リーダーシップの真ん中にこうしたグロースバリューを位置付けている。

著者 安渕 聖司

1955年生まれ。GE株式会社代表取締役 GEキャピタル社長兼CEO 1979年、三菱商事入社。1990年ハーバード・ビジネススクールMBA修了。1999年、米投資ファンド、リップルウッドの日本法人立ち上げに参画。2001年、UBS証券会社入社。投資銀行本部の運輸および民営化責任者として、多くの大型案件を手がける。 2006年、GEコマーシャル・ファイナンスにアジア地域事業開発担当副社長として入社。2007年、GEコマーシャル・ファイナンス・ジャパン社長兼CEOに就任。 2009年、GEキャピタル社長兼CEOに就任し、日本の金融サービス事業全般を統括、現在に至る。