革新的なアイデアが生まれるための条件を解説した一冊。どのようにイノベーターはアイデアを生み出しているのか。誰でも革新的なアイデアを生み出すことができるのか。


■複数分野の交差点がイノベーションを生み出す
異なる分野や学問、文化が交差する場では、既存の概念を様々に組み合わせて新しい非凡なアイデアを数多く生み出す事ができる。異なる分野が出会う場所を「交差点」、そこで目を見張るような革新が次々と生まれる事を「メディチ・エフェクト」と呼ぶ。

分野は、知識や実践などの様々な「概念（コンセプト）」から成る。ある分野の概念を多く理解すればするほど、その分野に関する専門知識を増やす事ができる。分野と複数の分野の交差点との最も大きな違いは、そこに含まれる概念がどのように結びつくかにある。ある1つの分野の中にいる時には、その分野の中に含まれる様々な概念を結び付け、ある特定の方向に沿ってアイデアを生み出していく事ができる。様々な分野が交差する場にいる時は、複数の分野に属する概念を結び付け、新しい方向へと飛躍するアイデアを生み出す事ができる。この2種類の違いは極めて重要である。

クリエイティブなアイデアは、なんらかの偶然の組み合わせによって生まれるが、それには大きく分けて2つの種類がある事が、これまでの研究でわかっている。

①空を走る閃光のような発見
通常、何かの問題を解こうとしている時にみられる。多くの場合、まず最初に集中的にその問題について考える時間が長く続き、次にあまりその事について考えない時期が続いた後に突然、解決法が見つかる。

②心の準備のあるところに訪れる発見
「心の準備」をしていなければその意味がわからずに、容易に見逃してしまうような発見。ある分野で熱心に何かに取り組んでいる人が、偶然のきっかけでそれとは直接関係のない事柄についての発見をする場合がこれにあたる。

クリエイティブはこの2つの発見に依存している。この素晴らしい交差的アイデアを発見するチャンスを増やす事は可能である。異なる分野の概念同士を偶発的に組み合わせるチャンスを増やすには、次の3つの方法がある。

・職の多様化
・多様な構成グループ
・交差点ハンティング（結び付きがありそうもない場所に結び付きを探す）

異なる文化や領域、専門分野間の交差点は、異なるアイデアの組み合わせを生じさせると同時に、そうした組み合わせを大量に生じさせもする。イノベーターが数多くの独創的なアイデアを生み出す事ができるのは、交差点で起きるアイデアの爆発のおかげである。

著者 フランス・ヨハンソン

実業家、作家 アメリカ東部のブラウン大学を卒業後、ソフトウェア会社を設立。CEOを務めた後、ハーバード・ビジネススクールにてMBAを取得。医薬品会社、ヘッジファンド、そしてイノベーション企業であるメディチ・グループを設立した。 現在はアメリカ最大の企業の重役から発展途上国の村人まで、世界中の人々を前に講演を行うだけでなく、執筆・コンサルティングを行う。