目利きが大切
個人のキャリア開発においても、企業経営においても「差別化」は最も重要な概念である。「差別化」の目的は、破壊される「あっても、なくてもいい商品」をつくってしまう事を慎重に避け、「なくてはならない商品」を生み出す事である。「差別化」されていない「似たようなもの」は、運命的に「供給過多」になり、勝ち目のない競争(レッド・オーシャン)に陥る。さらにはイノベーターにとっての格好のターゲットになり、異分野からの参入を呼び込みやすくなる。
こうした負のスパイラルから抜け出し、イノベーションを起こすのは「目利き」である。「目利き」があればこそ、競合の平均値から遠く離れたところに、新たな「本物」を生み出す事ができる。
マーケティングとは
マーケティングの目的は、イノベーションを「目利き」に見つけてもらう事にある。「目利き」には「価格」と「品質」のみならず、その商品を生み出した人々の「想い」に共感してもらう必要がある。「理念が投影された商品を通して、目利きといえる人々に理念に共感してもらう事で、社会のあり方を変える」ためにこそマーケティングが存在している。経営学における、マーケティングには3つの代表的な定義がある。
①ドラッカー:販売活動を不要にすること
②コトラー:顧客を分類し、ターゲットを絞り込み、そのターゲットに対して高い価値を提供し、利益をあげる活動
③レビット:顧客を惹き付け、維持するという企業目的を達成するために、総力を挙げてやらなければならないすべてのこと
イノベーションとマーケティングは本来一体のものであり、車の両輪のように、お互いを支え合うべきである。イノベーションのないところにマーケティングが用いられる時、長期的には必ず信頼が失われ、ブランドが毀損される。信頼を犠牲にしてまで、利益を生み出そうとすれば、その組織は必ず衰退する事になる。
マーケティングと心理学
人間の求めるものが、物質的なものから精神的なものへと急速に変化している時代にあって、無意識を無視したマーケティングはあり得ない。実際の顧客の消費行動の大部分は、水面下の無意識に依存している。そもそも「顧客は合理的で一貫した判断によって商品を選択している」というのが幻想である。
水面下の無意識にアプローチするには、心理学が必要となる。マーケティングに応用される心理学で代表的なものが3つ。
①単純接触効果:人間のある対象への高感度は、その対象との接触回数に依存する
②ディドロ効果:人間は本当的に「統一感」を好み、人から「一貫している」と思われたい
③ハロー効果:人間がある対象を評価しようとする時、顕著な特徴に引っぱられるようにして、他の特徴についての評価が歪められる