中小企業の事例を中心に、ドラッカーの著作から学んで成果を挙げた人たちのケース・スタディが紹介されている本。ドラッカーの本をもとに、まずは行動してみることの大切さを説いています。
■理解できずともやってみること
ドラッカー教授は「マネジメントとは実践である。その本質は知ることではなく、行うことにある」と言います。つまり、マネジメントは「理解」の対象ではなく、「実践」の対象だということである。
成果をあげる人は、まず行動を起こす。自転車の乗り方を本で表現するのは難しい。しかも読んだからといってすぐに乗れるようにはならない。それでもまずは、乗ってみる事である。乗ってみて転んでから、自転車の教則本を読めば、新たな発見がある。それが習熟を後押しする。
■生産的でなくなった過去のものを捨てる
通信設備を製造する日興電機製作所は、光通信への移行に乗り遅れ、業績は右肩下がりだった。転機となったのは事業の「廃業」。最大の得意先に納めていた赤字製品の製造を中止し、15年続けた新製品の開発プロジェクトもやめた。代わりに、自社の強みが生きる新分野の開拓を狙った。ドラッカーは「自らの強みは自らの成果でわかる」と言う。そこで自社製品の売上と採算を見直すと、利益が出ていて、売上が右肩上がりの製品が1つだけあった。それが、ナンバーディスプレイアダプターだった。
電話機の液晶画面に、電話をかけてきた相手の電話番号を表示するナンバーディスプレイは、新型の電話機への移行が進んだ2000年代前半には、その多くが製造停止になっていた。その中で、日興電機製作所は、在庫が大量に残っていたために販売を続けていた。
ところが、ネット経由で細々売っていたこのアダプターの売上は伸びていた。「予期せぬ成功ほど、イノベーションの機会となるものはない」とドラッカーは言った。この製品の売れている理由を探ると、意外なニーズを知る。アダプターは、美容室や飲食店の予約管理システムをつくるのに使われていた。電話とパソコンの両方に接続すれば、電話に着信があった時、相手の番号を店のデータベースにある情報と照合。顧客の情報をパソコン画面に瞬時に表示させられる仕組みを低コストで作れるというツールとして重宝されていた。アダプターの売上は伸び、数年続いた赤字を脱する原動力となった。
著者 佐藤 等
1961年生まれ。佐藤等公認会計士事務所所長 ドラッカー学会理事 1990年公認会計士試験合格後に開業し、現在に至る。2003年から、中小企業経営者などを集めたドラッカーの読書会を開始。
帯 キヤノン電子 社長 酒巻 久 |
日経ビジネスアソシエ2016年10月号 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
はじめに ― 言葉は道具 | p.6 | 3分 | |
物語1 小さな会社のイノベーションの起こし方 | p.17 | 12分 | |
物語2 「廃棄と集中」編 | p.35 | 7分 | |
物語3 「予期せぬ成功」編 | p.45 | 7分 | |
物語4 「外部にある経営資源」編 | p.55 | 7分 | |
物語5 「潜在的な機会」編 | p.65 | 7分 | |
物語6 「利益とは条件」編 | p.75 | 7分 | |
物語7 「顧客の現実を知る」編 | p.85 | 7分 | |
物語8 「何を測定するか」編 | p.95 | 7分 | |
物語9 「汝の時間を知れ」編 | p.105 | 7分 | |
物語10 「プロセスを管理せよ」編 | p.115 | 7分 | |
物語11 個人で取り組む時間管理 | p.125 | 4分 | |
物語12 「トップマネジメントチーム」編 | p.131 | 7分 | |
物語13 「組織=人が自己実現を目指す場」編 | p.141 | 7分 | |
物語14 「道具としての言葉」編 | p.151 | 7分 | |
物語15 「強みを生かす」編 | p.161 | 7分 | |
物語16 「貢献に焦点を合わせる」編 | p.171 | 7分 | |
物語17 「自らの事業は何か」編 | p.181 | 7分 | |
物語18 「何によって憶えられたいか」編 | p.191 | 7分 | |
まとめ―言葉を道具箱にしまう | p.202 | 13分 |
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