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なぜ生涯職人であり続けるのか?

200年以上前に創業したうなぎ屋『野田岩』の5代目。先代の父親から学び、うなぎを焼いて60年以上が経つ。著者は生涯、職人を貫く決意を語る。

生涯職人を貫く理由は、こんなに楽しい商売はないからである。うなぎは死んだ魚をさばくのではなく、生きた魚を扱う。焼く時は、その日の天候やうなぎの状態に合わせて火加減を調節する。微妙なうちわの動かし方で炭の温度が変わり、たれをつけながら蒲焼特有の色を引き出す。

どれだけ素晴らしい焼き上がりでも、それで満足することはない。今日は昨日より美味しく作ろう。明日は今日よりももっと美味しく作ろう。常に高みを目指して挑戦し続けるのが職人である。

老舗の味とは何か?

老舗と呼ばれる店の中には「創業以来変わらぬ味」を打ち出す店が少なくない。しかし、野田岩は、創業当時とは確実に味が違う。まず材料が違う。当時は天然ものが当たり前であったが、現在は時期によって養殖うなぎを使用している。
たれの味も違う。昔は運動量も多く、塩味が強い方が美味しいと感じてもらえたが、現在は甘い味が好まれるようになり、それに応じて醤油と味醂の配合を変えている。

メニューも現代的な内容になっている。「淡雪鍋」「一口志ら焼 キャビア添え」。また店ではワインも提供している。

一方、こだわっているのは、焼き方である。ほとんどのうなぎ屋は、うなぎを焦がしてしまっている。焦がさず、焼きが足りないように、丁寧に焼き上げる。焦げたうなぎでは本当の美味しさは味わえない。野田岩では代々、焼き加減を徹底している。

時代を経て変わるものは、意図的に変え、何があっても変えてはならないものは、こだわる必要がある。お客様のために技術を磨き、お客様のために尽くすという姿勢は変えてはならない。
「老舗は革新の連続である」5年、10年先の社会は変化するため、老舗にも革新は必要である。

経営で大切なこと

店はいたずらに大きくするためのものではない。地に足のついた商売をして、経営の土台を盤石にし、次の世代につなげることが大切である。

そのためには人を育てなければならない。うなぎ屋の場合「割くのに3年、串打ちに3年、焼くのは一生」であり、一人前の職人として仕事ができるまで10年はかかる。

人材育成で大切なことは、現場に入ることである。「生涯職人」を掲げ、毎日焼き場に立っている。他人任せでは人は育たない。

職人として技術を磨き、若い世代に伝えていくこと
商人として正しく商い、店を損得ではなく運営すること
経営者として従業員を育て、店の将来を考えること

これらすべてが、回り回って顧客のためになる。店は人がすべてである。