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2013/04/01更新

メイド イン ジャパン 驕りの代償

216分

5P

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パナソニック・ショック

パナソニックの経営危機が拡大している。2年間で1兆5000億円を超える巨額の当期純損失は、パナソニックが過去20年間稼いできた純利益に相当する。巨額赤字の理由は、経営判断を誤り、成熟化していた国内のテレビ事業に過剰投資を行って「出血」が止まらなくなった事などによる。

2013年3月期までの5年分の決算で当期純利益を計上したのは1回限りで、事業構造改革費を計上してはリストラをする経営を繰り返してきた。復活したといっては再び赤字に陥り、見せかけのリストラで繕う事を繰り返すのは、構造的問題を抱える没落企業の典型的なパターンだ。そのプロセスを振り返っていくと、経営判断の甘さや驕りがあったと言わざるを得ない。

これまで稼ぎ頭だった薄型テレビやDVDを中心とするデジタル家電が不振を極めた。値崩れやサムスン電子、LGとの競争に負けているという構図は、かなり以前から日本企業に共通する課題だった。このため薄型テレビについては、ソニーは台湾企業への生産委託を進め、日立製作所も国内生産からの撤退を決めたが、パナソニックの対応は鈍かった。さらに投資判断も誤った。2010年、投資額1500億円で尼崎にプラズマ生産の新工場、2350億円で姫路に巨大液晶工場を稼働させた。

パナソニックと対照的な動きをしたのが東芝だ。投資負担を避けるため、テレビのパネルは自前主義から台湾からの調達に変更し、自社では画像処理の心臓部の技術などに経営資源を集中させて開発する方式に変えた。東芝はテレビ事業で大きな「出血」はなく、経営者の判断が明暗を分けた形だ。

パナソニックでは全社員の1割を超える4万人の人員削減を行い、完全子会社化した三洋電機でもリストラが進められた。しかし、社内に危機感は薄かった。ここまでパナソニックが凋落した理由について、中枢にいた役員OBは「中村改革がすべての元凶」と語る。

中村邦夫氏は、事業部や子会社に一定の裁量を認めていた経営スタイルを見直し、本社に権限を集める「中央集権型」のシステムに変更した。2004年3月期から5年間は黒字が続き、中村氏は誰も意見具申できないほど「神格化」されていった。中村氏は半導体やプラズマパネルをすべて内製化する「垂直統合モデル」の戦略をとった。しかし、国内のテレビ市場は成熟化し、「垂直統合モデル」には限界が見えた。この時、パナソニック経営陣は、中村氏が決めた事に誰も反対できず、過大投資という失敗を招いた。

この数年のパナソニックは、倒産寸前だった1990年代後半の日産自動車の経営状況とそっくりだ。小手先の改革に終始し、新しい市場や商品を開拓できなかった点が似ている。名門意識にあぐらをかき、危機感に欠けた歴代の経営者や事なかれ主義で社内政治に走った社員が現実に目をつぶってきた点も似ている。