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2013/03/22更新

中国台頭の終焉 (日経プレミアシリーズ)

219分

5P

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中国経済の先行きは厳しい

中国企業への投資事業を行う会社を運営してきた著者が、中国経済の真実を語る。リーマン・ショック後の過剰投資や国有企業による民間企業の衰退、少子高齢化の急速な進行など、中国経済の水面下に存在する様々な課題を分析しています。


■過去の成長要因はピークアウト
経済学の生産関数の考え方に従って、経済成長を考えた場合、これまで中国経済の劇的な高成長を支えた要因の多くは、既に、または今後ピークアウトする。

①労働投入
数年前から人手不足が始まった。今後は少子高齢化の影響が急速に深刻化し、生産年齢人口が減少に向かう。

②資本投入
投入は今後も見込まれるが、既に相当の蓄積に達した今、特にインフラ投資の経済効果は逓減していく。また過去数年の投資が過大だったため、当分足踏み状態が続く。今後、生産年齢人口比率の低下により、貯蓄の伸びが鈍化すれば、投資も過去ほど伸びなくなる。

③TFP(全要素生産性)
インフラ、教育、企業管理など過去の改善は劇的だったが、いずれの面でも改善のピークは過ぎており、今後は過去ほどの成長寄与を期待できない。

中国経済が8〜10%といった高成長を続けられる時代は既に過ぎた。今は既に潜在成長率が5%前後の中成長時代に入っていると言うべきである。しかも、5%の成長すら必ず達成される保証はなく、短期、中期、長期と大きな問題を抱えている。

超短要約

■中国経済の見通し
①中国は既に潜在成長率5%前後の「中成長モード」に入っているとみるべきだが、短期、中期、長期と絶え間ない難題に直面するため、5%の成長すら保証される状況ではない。

②短期問題
リーマン・ショック後に発動された「4兆元投資」は効果も劇的だったが、後遺症も劇的だった。製造業も不動産もインフラも、何年も先までの投資需要を先食いしてしまった。おまけに投資財源の大半を有利子負債に頼った結果、これ以上高水準の投資を続ければ金融不良債権の増大を招きかねない。過去数年のような成長牽引役を投資に期待する事は困難である。

③中期問題
既に「ルイスの転換点」(農業部門の余剰労力の工業部門への移転が底を突いた時点)を通過した中国は、今後賃金や物価が上昇するので、産業の生産性や付加価値を賃金・物価上昇率以上の速さで高めていかないと、実質成長ができない新しい段階に入っている。今後は過去ほど劇的な生産性の向上が期待できないから(限界効用の逓減)、都市化の推進、第3次産業の発達、規制緩和、民力の培養などの課題に取り組む必要がある。効率の劣る国有セクターが膨張する「国進民退」問題の解決や、農民の都市移動を妨げて都市の人件費を高騰させる原因になっている「都市・農村二元構造」問題の解決もこの生産性・付加価値向上に必須である。

④長期問題
中国の2010年の出生率は1.18しかない。今後、生産年齢人口比率は既に2010年にピークアウト、総人口のピークアウトも2020年と推計される。日本の経験に照らせば、2020年以降の中国経済は潜在成長率も5%を下回り、厳しい試練に晒される事が予想される。

■中国経済の課題
今後の中国の中長期的成長を牽引する要因として、真っ先に挙げられるのは「都市化」の継続である。人口の規模と密度の高まりは、都市インフラの整備、産業の集積、取引の利便性、人材の集結、文化の発達など、経済社会の効率を高める様々な外部経済効果をもたらす。産業の発達を促し、さらなる人口の集積を呼ぶ過程で生産性や付加価値も向上する。しかし、そこには4つの課題がある。

①経済水準と比べて不相応に高い不動産コストが産業の障壁になる
②都市住民と農民の身分差別が、農村からの出稼ぎを阻害し、都市化を妨げる
③高齢化により、都市に流入する事が期待される農民が枯渇する
④国有企業の既得権益が、民営企業の成長や資本蓄積を阻害している

この数年、「中国は7%以上の実質成長を続け、早ければ2017年にも、GDPで米国を抜く日が来る」といった楽観的な見通しが語られてきた。しかし、仮に中国が2020年まで5%の成長を続けても、中国のGDPは米国の2/3にとどまり、その後には厳しい人口オーナスがやってくる。中国がGDPで米国を抜く日は来ないだろう。

著者 津上 俊哉

1957年生まれ。現代中国研究家、津上工作室代表 大学卒業後、通商産業省入省。中国日本大使館経済部参事官、通商政策局北東アジア課長、経済産業研究所上席研究員などを歴任後、東亜キャピタル株式会社社長を経て現職。

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作家 板谷 敏彦

章の構成 / 読書指針

章名 開始 目安 重要度
はじめに p.3 4分
第1章 中国は5年前には中成長モードに入っていた p.17 13分
第2章 「4兆元投資」の後遺症(短期問題) p.37 19分
第3章 中期的な経済成長を阻むもの―「国家資本主義」と「国進民退」 p.67 12分
第4章 新政権の課題(1)―国家資本主義を再逆転 p.85 18分
第5章 新政権の課題(2)―成長の富を民に還元(還富于民) p.113 18分
第6章 民営経済の退潮―一投資家の体験談 p.141 12分
第7章 新政権の課題(3)―都市・農村二元構造問題の解決 p.159 15分
第8章 少子高齢化(長期問題)―「未富先老」 p.183 21分
第9章 中国がGDPで米国を抜く日は来ない p.215 18分
第10章 東アジアの不透明な将来 p.243 14分
結び p.265 5分

キーワード

人口オーナス

オーナスは英語で「重荷」を意味し、人口が経済発展にとって重荷となった状態をさす。生産年齢人口(15〜…

ルイスの転換点

開発経済学上の概念で、農業から工業への労働力の移行が進み、農業の余剰労働力がなくなった段階のこと。 …

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