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2013/03/22更新

中国台頭の終焉 (日経プレミアシリーズ)

219分

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「4兆元投資」の後遺症(短期問題)

リーマン・ショック後、中国政府は「4兆元投資」(約57兆円)という途方もない規模の経済刺激策を発動した。「4兆元投資」政策は劇的な効果を発揮したが、その後の副作用も甚大な事が明らかになってきた。2011年には毎期9%台の増加を示していた四半期別GDPは、2012年には8.1%→7.4%と低下。世間では、景気急減速の原因を欧州経済向け輸出不振に求める見方がある。しかし、外需低迷によるブレーキは最近始まった現象ではない。景気急減速の主因は、過去数年間経済を牽引した投資がこれ以上続けられなくなって「失速」した事である。

4兆元投資の主役でもあった鉄道・道路や都市インフラなど政府の公共投資は、地方政府の投資競争を招き、実は4兆元どころか10兆元以上「5〜7年分の投資をしてしまった」とも言われる。今、地方政府の多くが、重債務状態に陥っている。各地の省政府は依然として華々しい投資計画を打ち出しているが、銀行は新規貸出に極めて慎重、さらに優良案件が目白押しだったインフラ投資も、今後は経済効果が低下する。

4兆元投資を引き金とした地方投資は、重厚長大型の設備投資においても過剰投資をもたらした。これらの業種は深刻な製品価格の下落に見舞われている。高成長が続くと信じて強気の投資を続けていたところへ、成長の低下が起きた。

不動産投資においても、ブームは一挙に冷めた。高値で取得した土地が事業化できずに塩漬けになっている例も枚挙に遑がない。

「国家資本主義」と「国進民退」(中期問題)

今の中国経済モデルは「国家資本主義」と呼ばれ、次の3点を特徴とする。

①政府及び国有企業が多くの経済資源と富を支配・所有
②政府に許認可、予算などの経済権限が集中
③金融、通信など多くの基幹産業を国有企業が独占

4兆元投資の膨大な発注のあらかたが国有企業の胃袋に収まり、国有セクターの膨張と民営セクターの衰退の傾向はますます顕著になった。国有企業は共産党組織部の人事でトップが決まる。周囲に情実がつきまといコスト管理が甘く、利益水準が低い。効率の低い国有セクターが肥大化すると、次第に成長力を失って失速し始める。

過去10年間政府は成長の富を様々な形で留保しただけでなく、税収や費用収入も飛躍的に伸ばした。しかし、成長果実の「官民再分配」を怠った結果、「官」への富の蓄積が進み、民間企業の発展に欠かせない資本の蓄積がうまくできなくなっている。

少子高齢化(長期問題)

2010年の統計調査で、中国の出生率は1.18と発表された。これに基づくと、中国の労働人口は2011年に始まっている事から2020年頃には人口オーナスの影響がはっきりし始め、総人口が減少に転ずる2020年代には、成長を続けるのが難しくなる可能性がある。