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2013/05/24更新

韓国 葛藤の先進国 (日経プレミアシリーズ)

182分

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様々な課題を抱える韓国の厳しい現実

輸出立国を掲げ、サムスンなどの財閥企業に依存する韓国。一方で、その財閥だけが儲かることで格差を生み、庶民に不満が噴出している。韓国の抱える経済問題や社会問題、日韓問題、北朝鮮問題など、その実態を紹介しています。


■世代間対立を反映した大統領選
当選した朴槿惠(パク・クネ)氏は、李明博(イ・ミョンバク)大統領と同じ保守系のセヌリ党から出馬した。同党は、いわば日本の自民党だ。自由主義経済を志向し、米韓同盟を重視する。高齢者層の支持が厚い。一方、20〜30代の若い世代の多くは、革新系野党の文在寅(ムン・ジェイン)氏を支持した。同党は日本の民主党内のリベラル勢力より、さらに進歩的。北朝鮮への融和的な姿勢も特徴だ。

韓国では元々政治理念による保革対立が日本よりはっきりしている。朝鮮戦争や軍事政権時代の南北対立を知る高齢者の多くは保守的。民主化を果たし、金大中大統領など南北融和時代の記憶が新しい若年層は革新的性向を持つ。ここ数年は、広がる経済格差が、世代間対立に拍車をかけている。

超短要約

韓国では、アジア通貨危機の経験から外貨不足や経常赤字への恐怖が染み付いている。人口は5000万人と日本の半分以下、名目GDPは1兆ドルで日本の1/5以下。「輸出立国」として生きていくしかないと、多くの有権者は分かっている。

韓国は12年末時点で、米国など8件45カ国とのFTAを発効させている。転機は、盧 武鉉(ノ・ムヒョン)政権が発表した「FTAロードマップ」で積極姿勢を明確にした03年。決めたら早いのが韓国だ。「同時多発FTA」と銘打って、世界の主要国・地域との交渉に次々と乗り出していった。

現在、GDPに対する輸出額は5割を超す。そのため、ウォン高は競争力の低下や採算性の悪化を招く。輸出にブレーキがかかれば、減速傾向にある景気の足をさらに引っ張りかねない。

リーマン・ショック後は、ウォン安といえる状態が続いたが、12年末のウォン相場は1ドル=1070ウォンと1年間で7.6%上がった。韓国大企業の輸出採算レートは1ドル=1059ウォン、中小企業は1102ウォンで採算割れの状況だ。

財閥などの大企業にとっては、朴槿惠政権の政治状況は悩ましい。ウォン高でも利益を確保するには、下請け企業にコストダウンを求めるのが手っ取り早い。ところが、広がる格差是正が最大の争点だった12年大統領選で、朴氏は「中小企業重視」の政策を訴えてきた経緯がある。

財閥が泣くか、中小企業が泣くか。ウォン高のツケをどこが引き取るか、という後ろ向きのゲームに陥る危うさをはらむ。ウォン高に対応できるかどうかで、大企業と中小企業の格差が拡大する懸念もある。

さらに課題は、財閥の隆盛がかつてほど国内を潤さなくなっている点だ。効率経営を徹底する財閥は、利益が出ても簡単には雇用を増やさない。2000年から10年間の動きをみると、韓国の輸出額は1722億ドルから4663億ドルと2.7倍に膨らんだ。ところが、大企業製造業の従事者数は69万6000人から67万9000人と、ほぼ横ばいにとどまっている。韓国は12年に2年連続で貿易額1兆ドルを達成したが、成長のエンジンを輸出に頼るばかりでは、広がる格差は解消しない。

鍵を握るのは、企業数で99%を占め、雇用の88%を担うといわれる中小企業だ。生産性の低い分野で、規制緩和などの改革ができるかが焦点となる。

韓国の葛藤の多くは、日本の葛藤でもある。輸出主導経済からの脱却や少子高齢化への対応、サービス産業の高度化は日本にとっても焦眉の急だ。国の規模が小さく、いち早くグローバル化を受け入れた韓国はある意味、日本の先行指標でもある。

著者 内山 清行

日本経済新聞ソウル支局長 1987年日本経済新聞社に入社、整理部、経済部、政治部、ソウル支局、政治部次長・編集委員などを経て、2012年より現職。

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章の構成 / 読書指針

章名 開始 目安 重要度
はじめに p.3 3分
第一章 天国と地獄 救われない超競争社会 p.13 28分
第二章 脆弱と野望 輸出立国の明暗 p.59 26分
第三章 過去と未来 日韓関係波高し p.101 37分
第四章 本音と建前 北朝鮮問題の行方 p.161 32分
第五章 権力と蹉跌 大統領の宿命 p.213 13分
おわりに p.234 3分

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