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2013/05/24更新

韓国 葛藤の先進国 (日経プレミアシリーズ)

182分

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深まる世代間対立

1997年のアジア通貨危機以降、韓国は輸出主導で目覚ましい復活と成長を遂げる一方、大手財閥などの企業は社員の「非正規化」を進め、雇用を絞り込んだ。韓国の常用雇用者は2012年で62.7%にとどまる。特に若者は深刻で、厳しい受験戦争を勝ち抜いて大学や大学院を卒業しても、正規職に就けるのは2人に1人といわれる。失業率は3%前後と安定しているが、若年層に限れば7.5%に跳ね上がる。

朴氏当選の原動力となった50代以上の投票行動を、韓国メディアは「老風が吹いた」などと呼んだ。猛烈なスピードで高齢化が進む韓国では、今や約4046万人の国内有権者の内50代以降が40%を占める。20、30代の合計は38.2%だ。10年前は20、30代が48.3%を占めていた。

事実上の定年は55歳ともいわれる韓国で、50代は老後の不安が現実のものになる世代でもある。そもそも民主化前後で分かれ、政治的な性向で肌合いの違う世代と世代が、雇用や福祉など生活に直結する分野で対立を深めている。

救われない超競争社会

有名大学に行って、高級官僚になったり、財閥系企業に就職するのが、韓国の典型的な成功モデルだ。サムスン電子の社員の平均年収は約7760万ウォン(約698万円)で、常用勤労者平均の2倍以上。さらに、中小企業の社員の年収は大企業の約半分と格差は歴然としている。

ただ、財閥などの大企業に入ろうとしても難しい。30大企業グループの大卒採用実績は9万5千人。同年の大卒・院卒者は約66万人もある。就職に失敗すれば、失望や不満は家族ぐるみで増幅される。

一方、中高年が成長の果実を謳歌しているかというと、そうとも言えない。高齢者貧困率は45%と、先進国最悪だ。儒教の影響が強い韓国では老後を家族や親族による支え合いに依存してきたが、価値観の多様化で伝統的なセーフティネットは期待できない。さらに、韓国では基本的には年金には税金を投入しないなど、社会保障制度は「低負担低給付」の哲学が貫かれている。年金だけでは暮らしていけない。

財閥叩きと財閥頼み

韓国の貿易額は11年に初めて1兆ドルを超し、世界9位の貿易大国となった。成功の主役が財閥企業だ。サムスン、現代自、SK、LGの4大財閥の売上高は韓国GDPの5割を超す。しかし、グローバル競争を強いられる財閥企業は売上が増えてもなかなか雇用を増やせないのが実情だ。最近は「財閥ばかり儲かって、庶民の生活は苦しくなるばかりだ」との批判がやまない。

輸出依存度が5割を超す韓国では、国内の景気が海外の影響を受けやすい。同時に内需が弱いので、成長を輸出に頼らざるを得ない構造にある。新政権の経済政策運営は「財閥系企業の輸出競争力を維持しながら、中小企業をどう育成するか」が焦点になっている。