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2014/04/24更新

神山プロジェクト 未来の働き方を実験する

  • 篠原 匡
  • 発刊:2014年3月
  • 総ページ数:224P

145分

4P

  • 古典的
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  • ひらめきを助ける
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「人との交流」を通して地域を発展させる

若者の流出や高齢化に伴って、日本の山間僻地では過疎化が進んでいる。その中で、なぜ神山にエンジニアやクリエイターが押し寄せるのか。神山に固有の理由はいくつかある。例えば、抜群のIT環境である。2000年代半ば以降、徳島県は県内全域に光ファイバー網を整備した。その総延長は、県民1人当たりに換算すると全国1位だという。この恵まれた通信環境がIT企業、特に動画コンテンツを扱う企業を引きつける。

生活費の安さもある。空き家の家賃は広さにもよるが月3万円前後。しかも、山深い割には利便性も悪くなく、新府能トンネルができた事で徳島市内との距離は一気に縮まった。

ただ、企業や移住者はITインフラがあるために神山を選択したのではない。神山という地域と住民が好きになったがゆえに拠点を設けた。神山という「場」が醸し出す雰囲気に引かれたという事だ。その雰囲気の中心にいるのは、神山に本拠を置くグリーンバレーである。

グリーンバレーは移住支援や空き家再生、アーティストの滞在支援などを手掛けるNPO法人で、5人のスタッフが働いている。職人など手に職のある人間を古民家に住まわせ、定住人口の増大を図る「ワーク・イン・レジデンス」というプロジェクトを始めたのも彼らなら、働き方を模索する都会の企業に空き家を貸し出す「サテライトオフィス」を思い付いたのもグリーンバレーである。

なぜ移住者が増えたのか。表面的な理由を語れば、社会全体が新しい働き方を模索し始める中で、グリーンバレーが進めるワーク・イン・レジデンスやサテライトオフィスといった施策がうまくいった、という事になる。強力なITインフラや徳島市内からの近さも、移住者の背中を押している。ただ、それはあくまで表面的な理由に過ぎない。

グリーンバレーに固有の特徴があるとすれば、それは「モノ」でなく「ひと」に焦点を当て続けた事だ。重視しているのは「そこに何があるかではなく、どんな人が集まるか」という1点に尽きる。新しい発想やプロジェクトは異なる価値観やスキルを持つ人同士の対話を通して生まれるものだ。そのために必要な事は、クリエイティブな人材が集まる場をつくること。その場さえつくり出していれば、あとは自然発生的に何かが生まれる。

神山に大勢の人が集まる理由、それは神山に漂う「空気」によるところが大きい。よそ者に寛容で、排除する事はあまりない。誰かが何かを絶えず仕掛けているため町の中は常にアクティブで、楽しい。どうすればこういった雰囲気をつくる事ができるのか。それはベクトルと継続性の重要性に尽きる。「何かを生み出せる人」を呼び寄せ、その人々の交流を通して地域を発展させていくという方向性が一貫している。